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五箇伝の技術がここに!海部刀とその多面性

  • 執筆者の写真: Emi
    Emi
  • 1月27日
  • 読了時間: 5分

更新日:2月18日

「なんかインドネシアに似ている気がする。」

海部川を初めて見た時、私はそう思った。



徳島県南部、

室戸岬から車で約40分のところにある海陽町。


この町は、亜熱帯植物が生育する最北端であるという。


そして、その町にある町立の博物館は、単なる郷土資料館ではない。


主役は「海部刀」という日本刀だ。


最近では、前方後円墳の発見も話題になり、歴史好きの注目を集めている。



なぜ海部刀なのか?



なぜ海陽町の博物館で、刀の展示が常設されているのか。


それは、かつて海部川流域に刀工集団が存在し、「海部刀」という日本刀を生産していた歴史があるから。


この町は、湾を持つ海洋民族の町でもあった。


船を利用して鉄を輸入し、刀工も集めた。


では、どうしてそこまでしたのか?


それは城主の

「強い武士団を作るには、まず刀を生産せよ!」

という方針によるものらしい。


結果、海部刀は「強い刀」

「よく切れる刀」として評判を得る。


蜂須賀家が大阪の陣で用いたのも

海部刀だったのではないか、と言われている。


実際、海部刀は陸上でも、海上でもよく切れた。


船の上で友綱などを切るためか、

ノコギリのような歯を持つ独特な姿の刀もある。



海部刀の多面性


しかし、この海部刀、少々ややこしい。


「あるときは〇〇、

 またあるときは✖️✖️、

 果たしてその実態は?!」

と、まるで江戸川乱歩の小説に登場する、

怪盗みたいだ。


つまり、いろいろな顔をもっているのである。


日本刀には、大和伝、備前伝、山城伝、相州伝、美濃伝という

五箇伝と呼ばれる源流があるが、

海部刀はそのうち美濃伝を除く4つの技法を取り入れている。


たとえば、

「備前風海部刀・・・」

といった具合に書かれているのはそのためだ。


最初、私は思った。

「風」ってなに?

海部刀は海部刀なんじゃないの?

 

これはつまり、

備前伝の作刀技術を持つ刀工がいれば、山城伝の技術を持つ刀工もいて、さまざまな流派の職人たちが海陽町に集まり、共存共栄していた、ということなのだろう。


海洋民族らしいおおらかさだと思う。



多様性が生み出す魅力


海陽町は、海があり、川があり、山があり、通常の植物があれば、沖縄や奄美のような亜熱帯植物がある。


桜が咲けば、マンゴーやバナナも実る。


刀に必要な鉄は取れなくても、

刀の一大産地となり、

小さな町に8つの城跡がある。


町も、刀と同じように多種多様で少々複雑。


でも、私はそこがとても良いと思う。

だって、海部刀を見るだけで

五箇伝のうち4つが学べるかもしれない。


なんて、お得感満載の刀なんだろう!


この複雑さを、魅力的だと思うのかどうかは、結局のところ自分の捉え方次第でもある。



異色のコラボレーション


そんな刀と町だから、

多様性を受け入れる文化があるのだろう。


その最たる例が、

インドネシアの影絵と日本刀を一緒に展示する、異色のコラボレーション

「海部刀の光と影絵」という企画展だと思う。


残念ながら、この企画展は終了したけれど、今でもエントランスホールには、川村亘平斎による影絵が展示されている。


多様で複雑だという特質は、

海部刀にとっての個性であり、

町の個性でもある。


そして、その「ややこしさ」が、

時代を超えても人を惹きつける理由なのだ。


「いろいろなものを受け入れて、

 消化して、未来へ進む」


結局のところ、ややこしいは正義なのだ。



結論:

ややこしさこそ正義


豊かな自然、多様な歴史、

異文化とのコラボレーション


―この小さな町の刀は、

 世界とつながる広い視野を持っている。


「ややこしいは正義。」

そう感じられる魅力を、ぜひ海部刀と海陽町で体感してほしい。




備考:補足解説


蜂須賀家

蜂須賀家は、阿波国(現在の徳島県)の藩主として有名な大名家です。蜂須賀家政が初代藩主となり、豊臣秀吉に仕えたことで知られています。特に大阪の陣では、蜂須賀家の武士団が活躍したとされ、その際に海部刀が使用されたとも言われています。蜂須賀家は徳島城を拠点とし、阿波藩を統治しながら地域の文化や産業の発展に貢献しました。


日本刀の五箇伝(ごかでん)

五箇伝とは、日本刀の製作技法の源流となる5つの地域の流派を指します。


1.大和伝(やまとでん):奈良県を中心に発展し、実戦向けの堅牢な刀を多く生産。


2.備前伝(びぜんでん):岡山県を中心に、最も多くの名刀を生んだ流派。美しい波紋が特徴。


3.山城伝(やましろでん):京都を拠点とし、洗練された刀身と優雅な作風が特徴。


4.相州伝(そうしゅうでん):神奈川県を中心に、豪快で迫力のある刀が特徴。


5.美濃伝(みのでん):岐阜県を中心に、実用性に優れた刀が多い。


海部刀は美濃伝を除く4つの技術を取り入れており、その多様性が特徴です。


海部刀(かいふとう)

海部刀とは、徳島県南部の海部川流域で生産されていた日本刀です。

海部川沿いには刀工集団が形成されており、

地域で輸入した鉄や独自の技術を用いて刀を製作していました。

その切れ味の良さと耐久性から「強い刀」として評判が高く、蜂須賀家の武士団にも使用されました。特に、船上で使用するためにノコギリ状の歯を持つ独特な刀があることも特徴的です。


海陽町にある8つの城

海陽町には、かつて8つの城が存在しました。これらは地域の領主や豪族によって築かれたもので、それぞれが地域の防衛や支配の拠点として機能していました。

代表的なものに以下の城があります:


•宍喰城(ししくいじょう):室戸岬に近い沿岸部の城で、海洋防衛の拠点。

•海部城(かいふじょう):海部川流域にあり、川と海の要衝を守る役割を果たした。


これらの城は現在、遺構や伝承として町の歴史の一部となっています。


海陽町の湾と海洋民族について

海陽町は湾に囲まれた地形を持ち、

そのため古くから海洋民族が活動する地域として栄えていました。

彼らは船を使い、遠方から鉄や他の資源を輸入しつつ、

海上交易を行っていたとされています。

この地理的特性により、

海部刀の製作に必要な材料を他地域から調達し、

多くの刀工を集めることが可能だったのです。

また、海陽町の湾はその静かな水域と自然の恩恵により、

漁業や海洋文化を支える基盤となっています。



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