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近松門左衛門と『今宮の心中』: 江戸時代の愛と葛藤

  • 執筆者の写真: Emi
    Emi
  • 2024年12月18日
  • 読了時間: 3分

更新日:3月18日


江戸時代に多発した心中事件。


庶民の心を掴んだ劇作家・近松門左衛門が、実話をもとに描いた『心中物語』。現代でも通じる愛と義理の葛藤、そして美しい言葉の世界をお伝えします。



近松門左衛門と心中物語


『曽根崎心中』に比べると有名じゃないので、『今宮の心中』は知らない人も多いと思う。


でも、この物語も実話が元になっています。


当時、心中事件は社会問題化しており、庶民の関心も高いテーマでした。

それを大胆にも浄瑠璃にして上演する。江戸時代に活躍した劇作家・近松門左衛門って、すごいアイデアと実行力!



今宮の心中事件: 実話が元の物語



現代のニュース報道風にいうと、「菱屋という着物仕立ての商家の奉公人の二郎兵衛と5歳年上でお針子のおきさが今宮戎神社の森で心中した」というただそれだけのお話です。


でも、心中の背景として描写される、江戸時代の大阪や京都の庶民の生活や風俗は、現代の私たちにも通じる人間味にあふれていて、男女がとことんまで追い込まれて、最終的に心中にむかう展開がスリリングです。


実際は・・・まだそこまで感じられるほど訳が進んでませんけど。



物語は、船で川下りをするシーンから始まります。


難波といえば、舟遊びで有名なだけあって、川の上も岸も賑わっています。


普段は滅多に載せることのない上質な荷を積んだ舟の上では、ご馳走が振る舞われていて宴が催されています。涼しい秋風が心地よく、ゆっくりと舟が流れていき・・・でも、浜辺では油を絞る臼が引かれている。


この油を絞る臼が、有名な「女殺油地獄」(油屋でおきた殺人の話)を連想させます。


よくない方向に舟が流れていっているんだよ、と悲劇を暗示してるんです。




近松作品の魅力: 美しさと人間味



近松作品が今でも読み継がれる理由は、リアルな人間描写にあるのかもしれません。


でもそれだけでなく、言葉がリズミカルで美しい。そして、ユーモアがあります。


訳さずそのまま言葉を使いたい、せめてリズムだけは崩さないでおくにはどんな言葉があるだろう、と悩みます。


セリフや地の文そのものが詩的で、一つの言葉に複数意味を持たせるものも多いです。


この言葉遣いが心中という悲劇的な物語に美しさを感じさせるのでしょう。


翻訳ってどの言語も同じかもしれませんけど、感覚をつなげて対話しているようで、とても贅沢な時間をすごしているように思います。




愛と義理の葛藤: 江戸時代のリアルな人間模様



今後、登場人物が愛情、義理、社会的な圧力の間で葛藤していきます。

愛を貫くためにどれだけの犠牲を払うべきか、というテーマが物語の核心です。


今も昔も、人は愛や社会的な圧力の中で葛藤します。


もしあなたが愛を貫くために何かを犠牲にしなければならないとしたら、どうしますか?




[原文]

おい、おい、おい、 

月見花見はいづくも同じ

諸国名所のその中中に。

たぐいなにわの

舟遊び

老いも若いも、下人も主も。 

男女がござござ舟に袂。 

涼しき。川風は秋といいても。

嘘ではないよの。じゃれでないよの本町橋を。

漕出て見れば天満川。

市の側なる初真桑買ふて冷やしてひいやりと。 

瓜を二つに打割れば似たりや似たりかきつばた。 

紫帽子河水に映らふ影を水汲みが。 

汲んで荷なふて持つやたごの棒。 

坊主頭振り立て道正坊の金びしゃく。 

あれあれ撫でて通れば一撫に、はや本復のいたみ酒。


茶舟でくだる。

樽肴。在所嫁御の里帰り。

上荷で送る葬礼や世の有さまざまを。

一時に見る舟遊び是つねになきお肴と。

ひとつ勧むる盃や。

しかれば舩の線の字を。

君にすすむと書きたり舟の屋形に三味弾けば。

納屋に油の臼を引。


---


• ジャンル: 世話物

• 初演年: 正徳元年(1711年)夏(推定)

• 初演座: 竹本座


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