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日々のかけら―犬と薬膳と私
柴犬と暮らす日常。薬膳レシピで整える心と体。
そして、日本文化や刀剣・古墳の物語。
食べる。斬る。吠える。そして、暮らす。
そんな日々のかけらを、ことばと記憶で綴ります。


【虚実の境界線】人形浄瑠璃と江戸の犯科帳──“物語の罪”は、本当に罪だったのか?
「その者、鼻を削がれ、市中を引き回されたのち、…」 読んでいたページを、そっと閉じた。 鼻を削ぐ? えっ? 本当に? ——それが、 江戸のリアル だった。 講談社現代新書の『 江戸の犯罪録 長崎奉行「犯科帳」を読む 』(松尾晋一著)は、200年、145冊もの記録をもとに、長崎という“江戸の国際都市”で起こった実際の事件と、その裁きを語った本だ。 長崎奉行所 が残した犯科帳には、江戸のリアルが淡々と記されている。「誰が」「どこで」「何をして」「どう裁かれたか」が一文の情緒もなく記され、読む者の想像力を鋭く刺激する。 そこには、現代の私たちから見れば目を疑うような処罰が、日常のように並んでいる。 たとえば、抜荷(密輸)を恐れて自害した者は、死体を塩漬けにされ磔。心中に失敗した者は、女は死罪、男は遠島。障子を盗んだだけで死罪。 ーー盗み、密貿易、偽証、下女の妊娠、果ては人を騙して金を取った話まで。 ただそれだけのことで、鼻を削がれた人もいた。 市中を歩かされ、見せしめにされた者もいた。 そして、ふと、思ったのだ。 これって、 人形浄瑠璃の世界 ではどう
10月25日


月下の刃と妖刀・村正──『籠釣瓶』が描く愛と復讐の美学
妖刀・村正とは何か? 日本刀をめぐる物語を追っていた。 有名な刀には、必ずと言っていいほど「物語」がある。 その中でも、歌舞伎や浄瑠璃に登場する“語られた刀”に、目を向けてみた。 そうすると、出てきたのが“妖刀・村正”。 「村正」といえば、“ 徳川家に仇なす妖刀...
3月11日


江戸時代の川辺にて──難波舟遊びと町の息づかい
──近松門左衛門の浄瑠璃に描かれた、川と人の風景から 「おい、おい、おい」と、ゑびや節がどこからともなく響いてくる。 その声は、三味線とともに川面を渡り、風にのって揺れていた。 舟の上には、季節をたのしむ人々の姿があった。 月見に花見、春も夏も秋も冬も、川に浮かぶ舟は賑やかだった。 江戸時代の物語世界 に描かれる難波(なにわ)の川辺は、 現実と夢が交差する、情緒とにぎわいの舞台。 この文章は、 近松門左衛門の浄瑠璃 (人形浄瑠璃・歌舞伎)に登場する川辺の情景をヒントに、 その背後にあった江戸時代の“人々の暮らしと心”を想像しながら綴った一篇です。 🌸 難波の舟遊び──季節を運ぶ川の上の宴 江戸時代、難波の川辺は、 舟遊びの名所 として名を馳せていました。 老若男女が集い、舟の上で肴と酒を囲みながら、風流を楽しむ。 三味線の音、唄の声、船頭のかけ声── すべてが混ざりあいながら、川面に溶けていきます。 肩が触れるほどの混み合った舟の中で、 見知らぬ人と杯を交わし、月を愛でる。 舟遊びは、ただの遊びではなく、 “季節を味わう“ 文化に身を浸す...
2月24日


近松門左衛門と『今宮の心中』: 江戸時代の愛と葛藤
江戸時代に多発した心中事件。 庶民の心を掴んだ劇作家・近松門左衛門が、実話をもとに描いた『心中物語』。現代でも通じる愛と義理の葛藤、そして美しい言葉の世界をお伝えします。 近松門左衛門と心中物語 『曽根崎心中』に比べると有名じゃないので、『今宮の心中』は知らない人も多いと思...
2024年12月18日


翻訳はアート?浄瑠璃翻訳に挑む楽しさと難しさ
浄瑠璃に挑戦する一日。近松門左衛門の作品に触れ、ことばあそびを楽しみつつ、翻訳の瞬発力を探る。翻訳者視点で伝える日本文化の魅力と難しさ。
2024年11月19日
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