ことばになる前の祈り──イスタクシワトルの洞窟に残る“記憶の場所”
- Emi | Kenshirou Siba Labo

- 2025年6月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2025年11月15日
ことばになる前の
祈りがひとつ
闇のなかで
ぽつりと光る
開けるための扉じゃない。
閉じるための壁でもない。
これは祈り。
これは記憶。

***
廃墟に立つ、ひとつの石の枠。
門のようでいて、どこにも通じていない。
ただ誰かの「願い」だけが、
かたちを残したまま
静かにそこにあった。
「ここには、記憶が封じられている」
見えないはずの“誰かの心”が、
まだそこにとどまっているようだった。
門の向こうには何もなかった。
けれど、風のような気配だけが、
指先にそっと触れた。
***
メキシコ・イスタクシワトルの麓。
その洞窟の奥には、
石のレリーフと簡素な祭壇がひっそりと置かれている。
メキシコには“ふたりの恋人の山”がある。
イスタクシワトルとポポカテペトル。
「眠れる女神」と「炎の戦士」。
結ばれなかった悲恋の象徴。
その麓に、古の祈りの場が息づいている。
先住民文化にとって洞窟は、
地中へと続く闇のなか、
命を育む母なる大地の胎内だった。
土の匂い。
ひんやりとした空気。
静寂に積み重なる、声なき祈り。
雨を呼び、豊穣を願い、
花や香、トウモロコシの供物をそっと捧げる。
十字架やロウソクは
カトリックの光を借りながら、
先住民の女神トナンツィンへと結びつき、
祈りは幾重にも重なる。
母なる大地へ、
静かに、確かに届ける祈り。
洞窟は、いまも神話が息づく場所だ。




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