雲龍図をめぐる空書き——空にひそむ物語
- Emi | Kenshirou Siba Labo

- 2025年6月3日
- 読了時間: 1分
更新日:2025年12月1日
そらがき—— 雲に宿る、もうひとつの文字
夢のなかで、ふと空を仰いだ。
淡い雲がゆっくり流れ、その動きが
まるで筆跡のように見えた。
知らない文字。
読めないのに、どこか懐かしい。
龍のようにも見えるし、
ずっと昔に忘れられた神さまの名前を
だれかが練習するように描いた跡にも見えた。

天空では、神々が筆を走らせる。
墨のかわりに光の粒を散らし、
音のかわりに風を揺らしながら。
言葉になる前の、“なにか”。
人がまだ名前をつけていない記憶や想いを、
雲の上にそっと描き残したのかもしれない。
わたしはその線を、指でなぞるように
静かに手を伸ばした。
触れたそばから、雲は形を失っていく。
けれど不思議と、
胸の奥には消えないものが残った。
――あの空の筆跡は、
ほんとうは“わたしの中の龍”が
書き続けていたのかもしれない。
誰もが空に龍を見た。
友松の龍も、宗達の龍も、そして探幽が追いかけた龍も、
どこかで“絡まり続けた願い”の影を帯びていた。
私が見上げた空の線も、
その願いのひとつだったのかもしれない。
龍は、今も雲のすき間に潜んで
“見えない線”を追いかけている。




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