🐾 【ケンシロウ日誌】Vol.1 祭り犬ケンシロウ、太鼓の町をゆく
- Emi

- 10月24日
- 読了時間: 3分
なぜかバンダナをつけるのは大好きな、ケンシロウ。
バンダナを外す時は首を大きく振って、「はよ、取れ!」とばかりに偉そうなのに、
つける時はおとなしく首を出し、尻尾が嬉しそうに揺れる。
でも、洋服を着ている柴犬はあまり見かけない。
雑誌やSNSでは見かけても、近所で歩く柴犬たちは、
雨の日も風の日もたくましく、自分の体ひとつで歩いている。
うちのケンシロウは、少し違う。
母が洋服を作るので、“衣裳持ち”だ。
雨降りはカッパ。
小雨が降りそうなときはTシャツ。
冬のお出かけには、ちょっとおしゃれしてダウンコート。
決して喜んで着ている風ではないけれど、
我々人間の都合に合わせて、渋々ながらも着てくれる。

金木犀が香り、夜に太鼓の音が響き始めるころ。
ケンシロウも、私や近所の人たちの高まる気分を察しているような、察していないような?
足取りが、いつもより少し速い。
トレードマークのバンダナは、10月に入ると
「祭」と赤い文字の入った黒い水玉模様の手拭いに変わる。
母の手縫いの一枚。
糸のひと目ごとに、季節がめぐる。
てくてく歩いていると、
「もう10月、お祭りやねぇ」と声がかかる。
笑顔が返ってくるたび、ケンシロウの足取りも軽くなる。
そして、秋祭りの三日間。
町も、空気も、足音までもが特別になる。
そう、祭りといえばハッピ。
お祭り期間中のケンシロウは、犬用に作った“ハッピ”を着て散歩するのが恒例だ。
小さい頃から太鼓台と太鼓の音、笛の音、人の大きな声に慣れているので、
重さ二トンもある太鼓台とすれ違っても、なんのその。
ハッピを着たまま悠然と横を歩き、通り過ぎる。
その姿には、太鼓台のカキ夫たちも思わず注目。
なにしろ、うちの地区のカキ夫たちが着ているハッピとお揃いなのだから。
歩道で太鼓台を待っている人たちからも、声が飛ぶ。
「可愛い!」「犬がハッピ着てる!」
私はお祭りの空気に浮かれ、ケンシロウはマイペースに声援を受ける。
いつもの服より少し着るのに時間がかかるので、
ケンシロウ本人は、ちょっとめんどくさそう。
たぶん、とっとと散歩に行きたいのだろう。
郷にいれば郷に従え。
この町では、1年は“お祭りからお祭りまで”。
ケンシロウも家族の一員で、地域の仲間だ。
犬だからって、甘えは許されない。
みんなで“お祭りを楽しむ”こと——
それも、ケンシロウに課せられた大切な役目なのだ。
🐕 ケンシロウの今日の1日
朝:太鼓の音に警戒する
昼:ハッピを着て、お散歩
夜:帰途につく太鼓台の後ろを、みんなと一緒について歩く。
大勢の人と一緒に歩く、スペシャルな散歩を楽しむ。
――そして、祭りが終わっても、ケンシロウの毎日は続く。
吠えるより、考えるタイプ。
どうすれば一番快適に暮らせるか、彼なりの“研究”は今日も止まらない。
お手、伏せ、そして――鼻チュン。
11歳の柴犬が発明した「自己主張の極意」とは?
🐕🦺 次回のケンシロウ日誌:
Vol.2「ケンシロウ、自己主張す。」
お楽しみに。



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