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俊太郎さんと、電話の終わり

  • 執筆者の写真: Emi  | Kenshiro Shiba Labo
    Emi | Kenshiro Shiba Labo
  • 2024年11月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:2 日前





追悼:谷川俊太郎さんが教えてくれた自由な詩と優しさ




言葉は、

書き終えた瞬間に終わるものではなかった。




詩人・谷川俊太郎さんがお亡くなりになりました。


「自由な詩がいい。年齢も職業も性別も問わない。
全部自由な詩にしよう。」

この言葉そのものが、まるで俊太郎さんの生き方のようです。


今振り返ると、楽しかったことが、次々と思い出されます。



窓辺の机に差し込むやわらかな光と、書きかけのノートと万年筆。詩人の言葉と静かな時間を感じさせる風景
書かれたあとも、言葉は光の中に残る。詩と静けさが交差する、ある午後の机

俊太郎さんと自由な詩



一時期、俊太郎さんと息子の賢作さんにお願いして、

「ことばとあそぶ おととあそぶ」という、詩と音楽の公演をしていました。


その延長で生まれたのが、「谷川俊太郎賞」という企画です。

公募した詩を俊太郎さんご自身が選び、受賞作をコンサートで朗読し、感想を伝える——

今思えば、ファン垂涎どころではない、贅沢すぎる企画でした。


この企画を思いついたきっかけは、とても単純です。

俊太郎さんに選んでもらえて、

しかも直接、言葉をもらえたら——

その詩を書いた人の人生が、少し変わるかもしれない。

そう思ったのです。


他の方がどうされていたのかは分かりませんが、

私の場合は、FAXで

「俊太郎さんとしたら、楽しそうなこと」を送る。


数日後、

谷川俊太郎ですが……」

と、自宅に電話がかかってくる。


うちの父が電話を取って、

「おーい、谷川俊太郎さんから電話!」

と、大声で呼ぶ。


そして私が、大慌てで受話器を取る。

——これが、いつもの流れでした。


俊太郎さんからの返事は、いつもシンプル。

「いいよ。やるよ。」

「やらないよ。」


この二つだけ。

毎回、ドキドキでした。


このときは、

「詩の選考をやったことがないから、やってみるよ」

そんな感じだったと思います。


公募条件をどうするか相談したときに、言われたのが、

冒頭の「自由な詩がいい」という言葉でした。


そして企画終了後、

「選考は、二度としない。」


と、笑いながら言われた理由は、

たぶん、俊太郎さんだけが知っています。





俊太郎さんと海辺の授業



「海で、詩の授業がしてみたいです!」


そんな一言から実現したのが、

徳島県・海陽中学校での浜辺の詩の授業でした。


学校のすぐ前に広がる、松林と海。

ホワイトボードを運び、

砂浜に座る子どもたち。

俊太郎さんは、ビールケースを椅子にして。


BGMは、波の音と、賢作さんのピアニカの音だけ。


「うみ」から連想した言葉を、

俊太郎さんが、するすると一つの詩にまとめていく。

まるで魔法のようでした。


あのときの子どもたち。

青い海と、青い空の下で、

俊太郎さんと一緒に詩を作ったこと、

覚えているかな。





俊太郎さんとあそび心



「茶室で、俊太郎さんとワイン会がしたいです。

遊びに来ませんか?」


そんな無茶な誘いで、

高松の栗林公園に来ていただいたこともあります。


仕事じゃありません。

あそびです。


最初は、集まった方たちも、驚くほど緊張していました。

でも俊太郎さんは、お酒を飲んでも変わらない。

いたって、いつもどおり。


飲んで、食べて、話す。

ワイングラスが重なるにつれ、

俊太郎さんの穏やかな話し方に、

少しずつ、笑顔が広がっていきました。


私の車で、徳島から高知まで、

観光しながら大移動したこともあります。

そのとき、運転席も、後部座席も、

すべてに座った俊太郎さん。


俊太郎さんの車好きには、正直、驚きました。





俊太郎さんと、電話の終わり



実現しなかった、

あれやこれ。


俊太郎さんとしたかったこと。


今でも、残念でなりません。

それらはすべて。

永遠に、お蔵入りです。


もう二度と

「谷川俊太郎です」

という電話が、かかってくることはありません。


やっぱり

寂しいです。


とても優しい方でした。

だから私は、

俊太郎さんに、緊張することがありませんでした。


「自分の頭の中にあるうちは、その詩は自分だけのものだけど、原稿用紙にペンで書いた瞬間から、詩は自分だけのものじゃなくなる」

俊太郎さんが、生前よくおっしゃっていた言葉です。



これからも。


俊太郎さんの詩は

私を含め、たくさんの人の心に寄り添い、


その人

その時々の思いをのせて

大切にされていくのでしょう。



俊太郎さん

ほんとうにありがとうございました。


心から、ご冥福をお祈りいたします。





「谷川俊太郎です」

という声は消えても


言葉は


今日もどこかで

誰かのところへ向かっている。

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