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詩は誰のもの?谷川俊太郎の言葉と、音楽でよみがえる詩の時間

  • 執筆者の写真: Emi
    Emi
  • 2024年11月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月23日


詩と音楽が出会う瞬間|谷川賢作のコンサート体験



「詩と音楽」のコンサートを企画した時、谷川俊太郎さんがこう言っていた。

 

自分の頭の中にあるうちは、その詩は自分だけのものだけど、原稿用紙にペンで書いた瞬間から、詩は自分だけのものじゃなくなる

 

俊太郎さんは亡くなられたけど、

この夏、私はもう一度その言葉をきいた。


現代アートが展示された美術館の一角。壁には色鮮やかな絵画が並び、スポットライトに照らされている。
静かな美術館の空間に並ぶアート作品たち

美術館のエントランスで行われたコンサートに足を運んだ。

 

このコンサートは、全国展開中の「谷川俊太郎 絵本★百貨店」の関連イベント。

古い友人でもある、ピアニスト・谷川賢作さん(俊太郎さんの息子さん)による楽しいコンサートが行われた。

 

大きなガラスの出入り口から、すーっと柔らかな自然光が差し込んでいる。

その光とピアノの音、音にのせた言葉が静かに、

時にユーモラスに空間を満たし、穏やかなひとときを演出していた。

賢作さんが曲をつけた親子合作の歌を、軽快なトークをまじえながら、ピアノで弾き語る。久しぶりに彼の音楽を生で聴き、心地よい時間を過ごすことができた。

 


谷川俊太郎の詩と「解釈の自由」



詩の意味を“固定しない”という哲学


そんななか、思いがけない話を耳にした。

それは、俊太郎さんの言っていた「詩は自分だけのものじゃなくなる」という、あの言葉の続き、その裏側にある話だった。

 

俊太郎さんは、雑誌やテレビなどでインタビューを受けるたびに、

「この詩に込めたメッセージは何ですか?」

などと、よく尋ねられたそうだ。

でも、その質問は俊太郎さんをちょっぴり不機嫌にさせたらしい。

 

なぜなら、詩に一つの決まった意味を押し付けることに対して、少し抵抗を感じていたからだそうで、俊太郎さんは「詩はそれを読んだ人のもの。感じ方はそれぞれで、解釈は自由だと思っていた」、という趣旨の話が賢作さんのトークを通じて伝えられた。

 


「詩は読んだ人のもの」発言の裏側


なるほど。

だからこそ、「原稿用紙に書いた瞬間に詩は自分だけのものではなくなる」とおっしゃっていたのか、と無自覚のうちに気にかかっていた未解決事件が解決したような気分になった。

そして、俊太郎さんの顔が思い浮かんだ。

 

「朝の光が差し込む窓辺の机。羽ペン、インク壺、手書きの詩が置かれ、詩人の静かな創作のひとときを描いた絵本風イラスト。」
やわらかな光の中、言葉が生まれる場所。詩と音楽が交差する、静けさと想像に満ちた時間。

詩と音楽が生み出す、心の余白


賢作さんのピアノが語る詩の世界


詩や音楽、アートは、創り手だけでなく、受け手によって新たな意味を生む。

まるで賢作さんのピアノの旋律が、ただの音の連なりではなく、聴く人それぞれの心に異なる感情や物語を紡ぎ出すように。

 

タイムカプセルのような記憶の贈り物


10年以上前に聞いた話の続きを、まさかここで聞けるとは思っていなかった。

まるでタイムカプセル を開けたかのような気持ちがした。

 

差し込む光と音と共に、時空を超えて贈り物を受け取ったような、

そんな特別な時間でした。





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