🐕🦺【ケンシロウ日誌Vol.9】ケンシロウと都合のいい耳
- Emi | Kenshirou Siba Labo

- 2025年12月30日
- 読了時間: 2分
——聞こえないふりにも、ひそやかな理由がある。
「ケンくん、もう帰るよー」
朝、実家にケンシロウを連れて行った。
彼は今、2階で母におやつをねだっている。
ケンシロウは階段を降りるのが得意だ。
小さい頃、抱っこされたまま身を乗り出して段差を研究していたせいか、
今では重力と一緒に ダダダダッ と駆け降りてくる。
──のはずが、今日は音がしない。
「ケンシロウ、帰るよ!!」
待てど暮らせど、“ダダダダッ”が聞こえない。
はよ降りてこい、ケンシロウ。

ママは絶対。
ごはん、散歩、おやつ。
ケンシロウの生活のほぼ全てがママで成り立っている。
家の中では、ほぼ小さなストーカー。
そんなケンシロウが、最近身につけた技がある。
それが “都合のいい耳”。
「けんくん! 来なさい!!」
ママの言葉は絶対。
でも 聞こえなければ 仕方ないじゃん。
「けんくん!!」
これは反抗ではない。
ただ──聞こえないだけ。
得意のスルーでも、無視でもない。
これは、れっきとした “聞こえないふり”。
思い出す。
うちのおばあちゃんもそうだった。
自分への悪口はよく聞こえるのに、都合の悪いことは一切聞こえない。
ケンシロウも、どうやら“おばあちゃん耳”を手に入れたらしい。
いい加減帰りたいので、玄関から声をかける。
「けんくん、お家帰るよ!」
「ケンシロウ!」
「ケン! 来なさい!!」
──ようやく階段の上で気配が動いた。
そして、悪びれもせず降りてきた。
どこかやり切ったような満足げな顔で。
ダダダダッ。
「はい、お待たせ!」
その口から、ふわっとチーズの香り。
……なるほど、聞こえなかった理由、判明。
2階でなにがあったのか?
——今日も、ケンシロウのひとり勝ちである。
🐕今日のケンシロウの一日
朝:……聞こえません
昼:ん? あっ、散歩?(都合よく回復)
夕:ご飯ね!!はい、今行きます!!(瞬間聴力100%)
🎬次回予告|Vol.10 「ケンシロウ、静かなる煽り屋」
犬には、吠えずに威圧する技がある──。
うちの柴犬ケンシロウは、今日も静かに、確実に、誰かの心をざわつかせながら散歩している。
ただ悠然と歩いているだけなのに、どこか挑発の香りが漂う。
それは、彼の“静かなる煽り屋”としてのもうひとつの顔だった。




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